2020年10月26日、一つの動画がYouTubeに公開されました。
田園調布学園中等部、高等部の有志の教職員によるリモート合唱動画です。
佐藤由里亜 先生は、音楽の道を志すため 高校から 音楽教育に力を入れている 桐朋学園 に進まれました。現在 我校では音楽講師をされています.
楽曲は松下耕作曲の『To Live 生きる』。作曲家・松下耕が新型コロナウイルスに苦しむ世界中の人々に向けて新たに作曲したもので、谷川俊太郎の名詩「生きる」の英訳が歌詞となっています。曲の終盤には、「GO FOR IT!」「FORZA!」「加油!」など、さまざまな言語での「がんばろう、友よ」の言葉が加えられました。
今回、その楽曲で合唱動画を作成された音楽科の講師 佐藤 由里亜先生にインタビュー取材をさせていただきました。
田園調布学園での教職員有志によるリモート合唱プロジェクトが立ち上がったのは、2020年2月の末に日本中の学校が休校になり、4月には緊急事態宣言が発令され、学校生活が突如一変してしまったあの時期のことです。
佐藤先生は、知人の紹介で「To Live 生きる」の作品と出会いました。新型コロナ収束への願いが込められたその楽曲に引き込まれ、感動し、純粋に歌ってみたいという気持ちが湧いたといいます。
コロナ禍を過ごす生徒たちを励ましてあげたいと考えていた佐藤先生は、教職員でこの「To Live 生きる」のリモート合唱をするアイディアを 兼子 尚美 教頭先生、音楽科専任の 黒井 晴子 先生に相談してみたところ、
まずは小さな規模からやってみましょう と賛同を得ることができました。
ここに、佐藤先生から教職員に宛てた呼びかけの手紙があります。
「教職員がひとつになって、歌う喜びを味わえたら、どんなに素敵でしょう。
大人も子供も、今まで楽しいと思っていたことを取り上げられてしまったと思いがちなこの時期に、生徒へのメッセージとしてリモート合唱を提案させていただきます。
「生きる喜びとは何か」を考えるきっかけになってもらえたらと思います。合唱は一人ではできません。みなさんにご賛同いただき、ぜひご参加いただきたいです。」(一部を抜粋)
授業は再開していたものの、新しい様式に沿った授業を手探りで模索していた頃だったため、声を掛けることもはばかられる先生もいたほどの忙しい状況下で、13名もの教職員(うち1名は「書」で参加)が参加の意思を示してくれました。
ここから楽譜と佐藤先生作の練習音源が配られ、各自での猛特訓が始まります。
リモート合唱動画ということは、それぞれ自宅で演奏する姿を動画に収め、それらを集めて1本の作品として編集しなければなりません。
ところがそういった作業が得意な先生方がいらしたのかというと、そうではなく皆初心者。
そのような中、自身が納得いくまで何度も撮り直した先生、私に出来るかしらと心配しながら一番乗りで提出した先生など、いろいろな個性があふれる動画が集まりました。
佐藤先生自身も独学で、編集作業に初挑戦。パッチワークのように13名の動画を編集しました。
こうして約1ヶ月の練習・撮影期間、約2ヶ月の編集期間を経て、「エール『To Live 生きる』合唱 田園調布学園 応援メッセージ」と題し、10月に動画が公開されました。
動画は、無音から始まります。生命力に満ちた花々の画像を背景に流れるのは、収束を願うオリジナルのメッセージ。まるで「黙想」を思わせる静粛な時間のあと、三部合唱、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラでの合唱が始まります。
歌詞の中にこんな一文があります。「生きているということ(それは)ふっと或るメロディを思い出すということ」。この先の人生で、感動することがあったとき、辛いことがあったとき、なんでもない瞬間でもいい、生まれてきた奇跡とともに、こんなメロディを思い出してほしい ―― 穏やかな優しい歌声と演奏には、そんな思いが溢れていると感じました。
今回、このプロジェクトに参加された教職員のみなさんの思いと合唱に込められたメッセージを、卒業生のみなさまにも届けたく、なでしこたよりにてご紹介をさせていただきました。まだまだ予断を許さない日々が続きますが、ぜひこの動画をご覧いただきながら、ご一緒に「がんばろう、友よ」と口ずさんでみませんか。またみんなで、笑顔で歌い合える日を願って。
記 なでしこたより31号 編集当番 矢島 百絵(54回生)